認知症治療で今「注目」される植物成分とは?
日本には現在約160万人の認知症患者がいるといわれています。
2011年以降、さまざまな治療薬が発売されましたが、今だ薬物治療は際立った結果を得られていません。
そのような現状の中、ある植物成分が注目されているのです。
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認知症とは?
認知症は病名ではなく症状を表した名称です。
認知症をまねく疾患は数多くありますが、代表的な疾患は
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
などです。
血管性認知症は脳梗塞の後遺症など脳血管障害が原因となって起こっているのですが、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は原因がはっきりしていません。
脳の萎縮、神経細胞の脱落など明らかな病理変化は見られるのですが、「なぜ発症するのか」というメカニズムはいまだ解明されていないのです。
現在の日本には約160万人の認知症患者がいて、そのうちの50%がアルツハイマー型認知症といわれています。さらにレビー小体型が10%を占めるため、より効果的な治療法が待たれています。
認知症治療の現状
認知症は放っておくとどんどん進行していきます。神経線維が破壊されながら進行していくので、進行そのものを食い止めなければなりません。
認知症の治療(とくにアルツハイマー型)は、1999年にアリセプト(ドネペジル塩酸塩)が発売されてから、ずっとこの薬に頼っている状態でした。
しかし、2011年にアリセプトと同じ作用機序をもつ
- レミニール(ガランタミン臭化水素酸塩):経口薬
- イクセロン、リバスタッチ(リバスチグミン):パッチ剤
が発売されました。
さらに、新しい作用機序をもつ
- メマリー(メマンチン塩酸塩)
が登場し、アリセプトなどと併用することで、認知症治療のバリエーションが一気に増えました。
いまだ認知症は抑えられない
様々な認知症治療薬が登場したわけですが、残念なことにいまだ認知症の進行を食い止めることはできていません。
これらの薬は脳の神経細胞の働きを活発にすることで、認知症の症状である「物忘れ」などの緩和します。
しかし、薬では脳の神経細胞の崩壊そのものを抑えることはできないわけです。
医師も困っている
認知症治療薬の難点は「誰でもしっかり効くわけではない」ということです。
認知症の薬物治療はかなり個人差があり、しっかり効く人もいれば、あまり効果が見られない患者さんもいます。
認知症が進むスピードを緩やかにできたとしても、突然階段を降りるようにガクンと認知症症状が悪化したりします。そして、時間が経つにしたがって認知症症状は確実に進んでしまいます。
家族の介護や経済的な負担を強いても、それに見合う治療効果があまり得られないことに困っているというのが現状です。
フェルラ酸~認知症の専門医が注目する理由とは?~
私がフェルラ酸を知ったきっかけは、勤めている病院の医師からフェルラ酸のサプリメントについて調べるよう頼まれたからです。
最初は半信半疑だったのですが、調べてみると多くの専門医が興味を持ち、「効果がある」というエビデンスも増えているようです。
フェルラ酸とは?
フェルラ酸は「お米のポリフェノール」といわれ、米や小麦などほとんどの穀物に含まれています。
「糊粉層」という部分に多く含まれているのですが、ぬかとして除去してしまうため、私達の食卓にならぶお米にはあまり含まれていません。
戦前はフェルラ酸が多く含まれた米や玄米を普通に摂取していました。
フェルラ酸が含まれている食べ物は?
フェルラ酸はお米以外にもさまざまな食品に含まれています。
例えば、小麦、大麦、コーヒー、トマト、アスパラガス、リンゴ、ピーナッツ、オレンジ、パイナップルなどの種子など。
天然の植物成分なので、安全性も問題なさそうです。
フェルラ酸の効果
フェルラ酸には、抗酸化作用、紫外線吸収作用、防かび作用、抗菌作用、血糖値降下作用、血圧降下作用等、多くの効果があることが確認されています。
化粧品や食品添加物に使用
フェルラ酸には、紫外線吸収作用、抗酸化作用、防かび作用、抗菌作用などがあります。
そのため、化粧品や食品添加物の酸化防止剤として用いられています。
アルツハイマーに効く素材として注目される理由
フェルラ酸には、活性酸素やフリーラジカルを消去する作用があります。
活性酸素やフリーラジカルはDNAを傷つけるため、細胞の老化を促します。つまり、「フェルラ酸は老化を抑制する作用がありそうだ」ということで注目されているのです。
最近では、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβ蛋白質の作用をフェルラ酸が抑制し、マウスの記憶や学習障害を改善することが報告されているほか(非特許文献1)、臨床試験でのフェルラ酸のアルツハイマー病に対する改善効果も報告されつつあり、アルツハイマー病の予防・治療剤としても期待されている。
アミロイドβ蛋白質は、40~50歳くらいから脳内に蓄積しやすくなるタンパク質です。このタンパク質が脳内に蓄積して脳の神経細胞が死滅するというメカニズムは、アルツハイマー型認知症の有力な仮説です。
まとめ
- フェルラ酸はお米の糊粉層と呼ばれる部分に多く含まれている植物成分
- 紫外線吸収作用や防かび作用から、化粧品や食品添加物に利用されている
- フェルラ酸の活性酸素やフリーラジカルを消去する作用から、老化を防ぐ効果が注目されている。
フェルラ酸の作用からして、認知症の治療に効果が期待できそうです。
最近、栄養価の高さから注目されている「玄米」にも豊富に含まれている成分ということで、私も試してみようかと思います。
フェルラ酸のさらなる臨床成果に注目が集まりそうですね。